ここから本編↓
TIAで遊び倒すこのシリーズ。
一番最初に決めたコンセプトを覚えていますでしょうか?
「ショートコース特化のランニングコスト激安なホビー車両。」
僕は忘れていました。備忘録を見返して思い出しました。備忘録だいじ。
あくまで、ホビー車両がコンセプト。
でも「レーシング」カートである故に、速く走ることに拘りすぎてしまいました。
SS仕様でこれ以上を突き詰めていくと、エンジンに手を出さざるを得ないのですが…KTについて色々語りだすとややこしいので、詳しいことは置いておいて…。
もっとこう、ランニングコストが安くて、楽しく乗れて、争わず…
カートを楽しむ時はね…誰にも邪魔されず…自由で…何というか…救われてなきゃあダメなんだ…。
…ん?
そう思ってカートをメンテしながら、目の前のモンキーを見て思ったのです。
中華横型エンジンならランニングコストも安くて楽しいミッションカートが作れるのでは?!
ミッションカート。
カートを乗ってる人なら誰しも一度は憧れると思います。多分。知らんけど。
でも、今のミッションカートのクラスはクラッチ摩耗しまくるし…タイヤ高いし…昔流行ってたのはいろいろ部品消耗しまくるし…。というか、コストが…
そこでモンキー用の横型エンジンです。
中華の125ccのエンジンなら3万円台で買えちゃう。
レーシングカートのエンジンの値段を考慮すると破格ですよね。
空冷だから水回りのトラブルや部品の複雑さとも無縁。
しかも豊富すぎるアフターマーケット市場。イジる楽しみも無限大。
でも、ミッションカートではないTIAと、そもそもカートに載せる設計じゃない横型エンジン。
この2つが相見え合体することなど可能なのか?
結論から言いましょう。
可能です。制作費は約8万円。
カート+横型エンジンのパッケージングは、過去にこの仕様で30万円前後で売っていたカートもありましたね。あのマシンは90cc遠心クラッチでしたが…。
もっとこう、適度にレーシングな感じのを求めています。
「そうそう!これこれ!」ってなるようなマシンも検索していると出てきますが、ビルダー自身が詳細に製作記を残している記事は見つからない。
そこで、物価上昇に喘ぐカート界でこの謎カテゴリーを日本で盛り上げるべく、
詳細にこのマシンの製作記を綴っていこうと思います。
○まず根本的に載るのか?
カブとモンキーをいじり倒してたときに余った部品から寸法どり。
中華横型エンジンの特性(?)として、腰下がとてもゴツいのが問題となります。
なので、
・マウント位置からのスプロケットの位相
・シート位置
・前後方向のエンジン取り付け位置(チェーンストッパーとの相関)
この全てが、5mmズレると成立しません。
TIAの場合は全てがギリギリです。
そのため、パイプで無理やりフレーム側のシート取り付けステーを曲げました。たぶん20mmは曲げた。
これでギリギリ乗ります。
ある程度行けるな、と目処がたったころにエンジン購入。
今回購入したのは、125cc二次クラッチセル付き仕様。
それとPD26キャブレター。
これで合計4万円ぐらい。
早速マウント製作します。正確な寸法を取る設備は無いので、段ボールで型をとって、この形にプラズマ溶断します。
なお、取り付けには下側のハンガー用マウントとステップ用マウントを使用します。
…定盤とハイトゲージ、欲しいなぁ…。
で、サクッと作って…
ここで、カブ・モンキー系で車高を弄り回してる人なら気付く問題があります。
シリンダー…水平じゃね……?
こちらは、かつてブロックタイヤ履かせて車高を上げた我がカブ。このときでも若干シリンダーが水平です。
このときはフロントサス周りは何もしてませんが、リアサスペンションにリフトアップアダプタをつけるとオーバーヒートしてしまい、即外した経緯があります。
説明しましょう。
もともと横型エンジンのシリンダーは完全に水平に設計されていました。
しかし、これがエンジン内にあるオイルポンプのパワー不足でオイルが戻って来れなくなり、オイル上がりが発生する。そのため10度程度傾ける設計に変更した。
って某知恵袋に書いていました。信じるか信じないかはあなた次第。
とにかく、横型エンジンは10度程度シリンダーを傾けないといけないというルールが存在するのです。
カートはその逆。
熱を持つ2ストエンジンのヘッドを冷やしたいがために、空冷エンジンのマウントは基本的に逆方向に角度がついています。
…載せることに必死で、このことを忘れていました。
そこで…
水冷エンジン用のマウントに変更しました。
水冷エンジンは、水平にマウントするようになっているので、このマウントじゃなくても良いかも。
使用したのは、ROTAX MAX DD2用の社外マウント。7000円ぐらい。もっと安いのないのか………。
こちら、分割式になっていて非常に制作が楽になります。詳しくは画像検索してみて。
これに関して、カート界隈の超情報通の方から情報を頂きました。この場を借りて感謝いたします。
細かく寸法出ししてなんだかんだ載りました。
⚪︎イケるじゃん!いろいろ部品つけたら完成では?!
そう思っていた時期が僕にもありました。
エンジンが載ってクリアランス関係も解決すればこちらのもの。
TIA(通常のカートのシャーシ)に載せる上で、あと必要なのは、
・マフラー(カート用に加工が必要)
・クラッチレバー
・シフトレバーとリンク
・クラッチケーブルとスロットルケーブル
・ハーネス
です。
まずはマフラーから。
え、マフラーから?
そう。モチベーション一番上がるでしょ?
それに熱を持つ部品なので、これの位置を決めてからいろいろ熱を持つとマズい部品を逃す算段です。
マフラーは、アップマフラーが必要です。でないとシャフトとカウルにぶち当たる。
そこでダックス用のアップマフラーを取り付けます。
この時点では実は無加工のポン付け。
本当はモンキー用の純正ルックのスポーツマフラーが丁度いいと思うんですが、サイレンサーはデカいほうがタダモノじゃ無い感があって良く無いですか?知らんけど。
あと、ブランド物のマフラーも憧れはありますが、予算の都合で諦め。
もう一つ、鉄製のマフラーが欲しかった。ステンレスは焼き色も良いし錆びないし良いんだけど、溶接がめんどくさい…。
これを、本来チャンバーを取り付けるステーを逆側にして取り付けてみます。これに関しては大した加工はしてません。
ちょっと気になるのは、やはりバイク用なのでパイプが長い。
なので、
途中で切って繋げました。ショート加工。
実は長いまま(未加工のダックス仕様)の状態でも走ったのですが、長すぎるが故の負荷がフランジに強くかかって、フランジ側のボルトがすぐ緩む症状が出ました。
音なんて2ストのカートより圧倒的に静かなんだから、短くして爆音でナンボです。
パイプの溶接は難しい。端材で練習してから挑みましたがやはり真っ直ぐ巻けない。バンテージ巻いて誤魔化し…。
燃料類も近くにいるので、遮熱は無意味ではないはず。
次にクラッチとかギアの操作系と駆動系諸々。
スプロケットはBirelartのレンタルカート、N35用スプロケット(φ40用、428の26丁)。
この時点で、428チェーンにすることは確定です。
そのためフロントはグロム用の428ドライブ…なのですが、
4miniは基本10インチ〜17インチのタイヤ。カートは5インチ。タイヤの外径からして、ギア比はどう考えても合うわけがないので、できるだけハイギアにしなければいけません。
そのため、キタコから出ている一番大きいギア、16丁の428ドライブを取り付けています。
こちらで一度テスト走行しましたが、KTでのギア比9.0のコースでちょうどよく、それ以上のコースだとエンジンが回りきります。
このエンジンの美味しいところは6000〜8000ぐらい。(多分)
なのでもっとローギア化が必要です。
そこで中国の通販から428の18丁を取り寄せて取り付け。
この仕様特有の問題として、車体側のスプロケットがエンジンよりかなり低い位置かつ短い距離で繋がなければいけないので、通常のバイクに取り付ける際よりもかなり下向きにチェーンが出てきます。
そのため、大きなスプロケットを取り付けると本来バイク用のカバーを取り付けるネジ穴の部分がかなり強く干渉します。
そのため、下の部分をグラインダで削り落としています。
ニュートラルスイッチも怪しいですが、僕は使ってないので潰れてもまあしゃーないと思ってます。
削るのはオイル漏れが怖いですが、腰下のブロックとツラが出るぐらいまで削っても問題なしでした。
18丁を取り付けて走ってみた結果として、KTのギア比8.2のコースでちょっと伸びたりないぐらいの感覚。でもエンジンの美味しいところは活かせている感じです。
感覚的にはギア比7.3ぐらいのコースでも行けそう。
そのため、18丁を取り付けることをお勧めします。
シフトは、廃車予定のミッションカートの部品を追い剥ぎ。根本のカラー?的なやつ?ボルト通すやつ?ごと追い剥ぎしてサクッと溶接。
ミッションカート化は意外と簡単です。
チェーンも簡単。長めのリンクのチェーンを買ってチェーンカッターでいい感じに切って繋ぐだけ。ちなみに50Lあれば充分でした。無駄に110Lを買ってスペアのチェーンができるぐらい。
駆動系と、個々の部品の準備はOK。ここからの問題は、他の「カートの部品」と「バイクの部品」をどう繋ぐか。
ミッションのリンクは、カートのタイロッドをそのまま使用しました。
しかし、エンジン側のレバーは?
余っていたバイク用シフトレバーをグラインダーでぶった斬って、余っていたボルトとかなんかいい感じに繋げてみる。
で、シフトの入れやすさを考慮してできるだけリーチを長くしたらシャーシから飛び出たので作り直し。この辺はちゃんと寸法取って作りましょう。
これでシフトはOK。
次はクラッチとスロットルケーブルです。
バイクは、エンジン〜ハンドル周りまで0.8mもありません。
しかし、カートは1.2m程度は必要。
バイク用(できるだけ長くしたいので、中国ホンダのCBF125T用のケーブルで試した)のクラッチケーブルとかを試しましたが、長さが全然足りない!!
なんとか繋げれる術はないのか?
いろいろ過去に触ってきた乗り物の部品を舐め回すように観察してみます。
すると最高の部品に出会いました。
ロードバイクとマウンテンバイク用のブレーキ・シフトケーブルです。
自転車は、ハンドルからリア回りまでの距離が長いので、超長いケーブルなのです。
強度もあるし先端の形状もバッチリ合う。
マウンテンバイクのシフトケーブルはスロットル用、ロードバイクのブレーキケーブルはクラッチ用で使用します。
また、アウターのアジャスターはバイク用と自転車用のハイブリッドで。
さて、残るはハーネスです。
最初は線とカプラー集めてハーネス作るぞ〜〜と息巻いていたのです。
ただ、この大陸製のエンジンとCDI、そしてジェネレータは配線図の色と実際の線の色が全く違うのです。
僕の場合は、手元に中華モンキーがあるので、それの配線からリバースエンジニアリングしました。
ちなみにこのロンシン 125ccエンジンのコネクタの解析結果は…
・赤/白 →パルスジェネレーター
・白 →コイル
・黄 →コイル
・黒 →アース
・黄赤 →エキサイタコイル
このような感じ。部品の配線図からこの線はこう、あの線はこうと阿弥陀籤を引くような作業が必要な上に、かなりのカプラーを準備しなければいけません。
そのためいろいろ悩んだ挙句、このエンジンを買った通販から大陸製のハーネスキットを買うことにしました。
ハーネスキットさえ買えば繋ぐだけの簡単作業。
予算をケチろうと思えば、差額2000円ぐらいでハーネス自作もできると思いますが、
結線作業とか、線の色などをいろいろ考える手間を考えれば、バイクのハーネスをポンと付けたほうが圧倒的にラクです。
ちなみに長さはバイク用で十分足ります。
これで、最低限エンジン始動に必要なものは揃いました。
⚪︎いろいろ部品繋がった!エンジンかけるぞ!!
次の敵は、地球の重力。
いざ、エンジンを掛けてみましょう。
カート用のバッテリーホルダーにカート用のバッテリーをそのまま繋いで、セル始動!!(事前に火花は確認)
キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル…………(セルの音)
1分近くセルを回してもエンジンはかかりません。
モーターがイカれるので、一旦中止。
見ると、キャブレターまでガソリンが来ていません。
…………想像はしていました。
バイクであれば、エンジンの上にガソリンタンクがあるので、ガソリンはキャブレターまで自重で落ちていきます。
しかし、カートはタンクが人間の足の真ん中にきます。というか、タンクとキャブの位置はキャブの方が高い。
なので重力に引っ張られてガソリンを吸いません。
そのため、燃料ポンプが必要です。
横型エンジンに燃ポンをつけるにはどうすればいいか?
いろいろ悩みましたが、どうやらスクーター用の燃料ポンプをエキマニから負圧を取ってポンプを動かす方法が定番のよう。
これに倣ってポンプを取り付けます。
※こちらのブログを参考にさせて頂きました。
詳しくはこちら【中華DAX】負圧式の燃料ポンプを追加して、ガソリンがキャブに安定供給されるようにする | 湯あたりキットバイク
ポンプをつけて…
もう一度セルを回す…………
ポンプ〜キャブのフロートに至るまでのガソリン量はそれなりに必要なので、クランキングは必要。
30秒ほどセルを回すと…エンジンがかかった!!!
いろいろ操作を確認して問題なくクラッチ、ギア操作ができることを確認したら、いざサーキットでテスト走行!!!
⚪︎結局人間が乗るとなるとどんな感じなの?
走行フィールや、走った後に出てきた問題点を挙げる前に、実際に組んでみないとわからないことがあります。
それは、人間が乗ると人間の干渉する部分はどんな感じなのか?ということ。
ここまで、ひたすらにエンジンを載せて動かすことだけを考えていました。
…人間が乗ることを考えずに。
載せるためならシートをひたすらに左に寄せたぐらい。
結果としては、まずシートとハンドルの位置は意外にもほとんど気になりません。
もともとカートは左寄りですしね。
干渉は?
ヘッドが太ももに来ます。腕の近くにキャブがきます。でも、運転には支障はありません。
なので、何も考えずにひたすらはエンジンを載せることに集中すれば良いでしょう。
⚪︎根本的な構造上どうしようもない問題点は?
すでに数回、テスト走行は重ねていますが、問題点?としては、
・フライホイールカバーがシートと当たってるぐらい近いので、エンジンが熱を持ち出すと腰に熱が来て熱い(熱い)。
・ハンドルにボロボロのグリップテープを巻いていたが、剥がれてきた時にキャブが近すぎてグリップテープを吸い込んでストールした
・エキマニから負圧をとっているので、エアの量が足らずエアフィルターをつけていたのをファンネルに変更した
・普通のカートと違って、エンジンの上側には部品がないので、エンジンに肘が当たらなくて快適
ドライバー的なそういう意味での致命的な問題はほぼありません。
シートの熱問題は…エンジンの大きさから仕方ないと思っています。
セルなし仕様ならもう少しスマートになると思うのですが、作ってみて思ったのはキック始動はかなり無理があること。かといって、4ストの押し掛けはかなり辛いものがあると思います。
そもそものコンセプトとして、普通のカートよりももっと気軽に遊べる楽しい乗り物を作ることがコンセプトなので、セルは外したくない…。
ストイックな方はセルなしでも良いかも。
あとこれはエンジンの問題ではあるのですが、クラッチがやたらと重たい。
さらにバイクのクラッチレバーよりもリーチが短いので、クラッチ操作にはそれなりの握力が必要。
これ、カムのグリスアップとかワイヤー取り回しの見直しとかしても改善しないんですよね…もう諦め気味…。
それと、眉唾物ですが足のせいでヘッドに風が当たらないと見込んで、ダクトを装着してます。効果は知りません。
以上。ひとまずは完成しました。
今回はあくまで制作編として、走行したあとの改善も含めて記しました。
次回!
実は30kg近くあるエンジンによるリアヘビーな動き!
100cc2ストには敵わないパワーの伸び!
2ストでは味わえないクソデカトルク!
弾ける中華電装!
真夏の中華エンジン、加熱したエンジンオイルは遂に危険な領域へと突入する…!
走行インプレッション編へと続きます。